おもちやけた

orokanaburogu

Solitude HOTEL ∞F(20.1.5)

思い出ん 

 

 

 

 

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2020年、1月5日。

年が明けて間もないと思っていたが、

まだ”明けていない”らしい。

それは前日にメンバーたちが言っていたことだった。

 

2020年、1月5日、大晦日

これまで大変お世話になりました。

 

お世話になった過去や気持ちを、12月の下旬からずっと考えていた。

そうして、約1万字ほど書いたのが以下の日記で、私がメゾンブックガールと出会い、沈み、浮かび、また沈むことをざっと書いたのだが、あくまでダイジェストのようなものだ。書いていないことなんて山程ある。

 

なぜかここで、振り返るべきだと思った。

omochi-yaketa.hatenablog.com

 

「正月休みの連休がはやく最終日になればいいのに」

そんなことを思うのは、これまでも、これからも、ないだろう。 

 

期待と緊張に膨れて破裂しそうだった。

 

終わってしまうのが嫌で、始まらなければいいと思った。

でもそれは絶対にイヤだった。

始まるなんて嘘みたいだと思った。

 

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2020年、1月5日、大晦日渋谷公会堂、LINE CUBE SHIBUYA。

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光の線がつくるのは

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Solitude HOTEL ∞F

 

S席チケットの番号をたどって座った席は、前方だけれど前過ぎず、舞台の床が自分の首の真ん中の高さにある席。Solitude H"O"TEL の”O"がまっすぐみえている。舞台と外枠までが完全に視界に収まり、無駄なものは見えていない。最高レベルの席だった。暑くも、寒くもなかった。

着席して漂う音に耳を傾ければ、海と宇宙を想像する空間を感じる。

わたしたちは、海と宇宙の子供たちとして揺られた。

 

ぼんやりとSolitude HOTEL ∞F の文字を眺めて、

なんで8は倒れているんだろうと改めて思って、

それまでは無限の宇宙を感じていたけれど、

単純に字だけみたら、倒壊したみたいだな、と思った。

 

17:10 期待に応えて暗くなる

 

はじまる。

 

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風の脚

 

幕が上がると、中では風が海に波たてる。やさしいように聞こえても立つ波は激しくて、たくさんのものを流して連れさっていくような波。

幕が上がるずっと前から海はそこにあったようだった。

 

海辺にて

 

「海の底で、君は泣いてたの。」

歌声が聞こえる。でも視界に広がるのは海だけ。どこにいるのかと天井や右左に視線を移してもみつからず、海に視線を戻せば透けてみえる姿。海の中だ。海の中にいた。檻の中のようだった。

 

「低い音が、海の中で鳴る」

海の底を鳴らして海辺まで響かせるように押し潰れそうな低い音で包まれる。

 

海の底に光が差込む。

闇に近いはずの海底はとても碧い海に変わっていった。

「夏が過ぎて、晴れた朝の横顔笑っていた」 

 

闇色の朝

 

間髪入れずに、闇の朝を迎える。

Maison book girl / 闇色の朝 / MV

音は途切れ、視界は歪み、闇に包まれる。

静寂の闇が過ぎ、時計は動き出す。

ステージにみえる姿。確かに動き始めていた。

顔に空いた闇に飲み込まれていく。 

「鮮やかに晴れた夜」

 

rooms_

 

黒い穴の中の部屋。

天気はおろか時間も温度もわからないような空間。光の線が走る。

圧縮された静寂を取り戻すかのように増えていく徐々に増えていく1拍。部屋が静寂の闇に包まれる一瞬。いつ闇が明かされるのか、明かされたときになにが待ち構えているのかは、その一瞬の間にはわからない。何も無くなったような瞬間に、うごき、うしろに進む証。

急ぎ足で聞こえているような音楽が、たしかに速くすぎる時間なのか、気のせいなのかはその時に確かめる術はない。

 

「何もかもがあって、何も無くなるの。」

 

狭い物語

 

みたことのある赤い荒野の世界では無かった。

その記憶は燃えていた。最初は、家が燃やされているんだと思った。

ステージは、今いる彼女たちは、燃えてない。白いサーチライトのような光が照らしていた。

燃える火は動いていて、人が動いていた、4人、自分たちを燃やしているのか?過去の記憶を全部燃やしているのだろうか?それともホテルを?本が燃やされたことだけははっきりわかった。

そうしているうちに、気づいたら彼女たちは倒れていた。けれど、歌うことはやめなかった。

意識が途切れるまで、歌い続けた。

「夢じゃないの。今も、ここにあった部屋で抱き合ってるの。影と体を重ねている」

 

「夢じゃないの。今も、手のひらで触れてる、浮かんでいるベッドで朝を迎えるの」

 

・・・倒れたまま、静寂。

しばらく眠って一人の世界で起き上がった、ような矢川はつぶやくように歌い出す。そして和田も起き上がり、歌う。この曲は、、、

 

 

ゆめじゃないの、と歌っていたあとにfMRIを鳴らされた夢が放つ、倒れつづける光が目にささる。

「列車の中、黒い人達、目が合って。最後の耳鳴りが聞こえて、歪んでく。」

 

すべて燃やされて忘れてしまった曖昧で忘れてしまった記憶の画を思い出そうとするけれどぐにゃぐにゃしている。

 

「消えたゆめ 本当のことは いつも ゆめに そっとしまってる」

抱き合い、身を寄せ合う四人が放つ光は美しく、光を闇に刺すようだった。

 

長い夜が明けて

 

抱き合ったまま。「長い夜が明けていく」・・・

夜を明かすこの歌は圧巻だった。赤い雨がおちるその夜の空に手を伸ばし、問い、願いを叫ぶように。

彼女たちはいつでも、何度も何度も朝を繰り返し、闇を払ってもこうして命をかけて夜を明かして朝を届けていく。

「そして、朝が訪れる。」

「夜がない世界が始まってゆく」

 

・・・

 

LandmarK

 

「空の下、にじむ屋上の煙。銀色と二人、影を落とした。」

迎えた誰もいない街を影とめぐりなにかを探し続ける。変わらないでと願いながら、記憶を辿るように探す。何が、誰がランドマークなのだろう。

すぐに夕焼けは沈んでいく。

 「笑ってる写真だけ 変わらないの。」

「銀色に閉じ込めた二人はもう。ずっと僕らは。」

 

鯨工場

 

無機質で色を失ったような工場にたどり着く。ここは銀色?容赦なく煙が立ち上る。

ここに探し物があるのだろうか?急ぐように進む曲と戦うような景色。

「僕らの朝は次の唄で明けてゆくの」

夜が明けるのではなくて、朝が明ける。

 

ノーワンダーランド

 

異世界。しかしこの曲が「ノーワンダー」と名乗り出る。ワンダーって?

突然の鮮やかな世界にどうすればいいのかわからなかった。

手拍子をうながし、また、この曲はそう、振り付けを一緒にやることが要求されていた曲である。急にSolitudeHOTELの世界から剥がされ、参加させられて、没入して観ていた自分の身体を思い出し、これがノーワンダーということなのか それとも記憶を思い出したときの真似事なのか

 

POPな映像が今まで観たもののバランスを壊していく

 

my cut

 

…ノーワンダーランドに続き、一緒に踊れとのごとく、飛び出す曲がやってきた。明るい場所で、あたたかい光をあび、オイオイと言い、こちら側に反応を伺うようにして。それも長くは続かない。

 

「僕の名前を2つに切って」

 

・・・音を立てて引き裂かれていく・・・

 

/// MORE PAST

 

檻のようなスクリーンの奥でさみしげに歌う。

「何も変わってないからなの。僕の名前を2つに切って」

そう歌うこの曲はそのとおり、

my cutとMORE PASTという2つの曲に切られていた。

 

レインコートと首のない鳥

 

バチバチと音を立てるシャッターの音でスクリーンが上がるが、首元で止まる。首が切られている。2つに切ったのは曲だけではなくて、身体まで切ってしまったのだろうか。

白い鳥?がステージに現れる。

踊る者達には見えていないようだった。いや、鳥だけ見えていないのではなく、誰1人も見えていないのかもしれない。近くを通るたびに、意識が朦朧とするように、身体が自由を利かなくなるように腕が動かなかったり、持っていかれそうになるが、少し経つとまたがむしゃらに踊り出す。誰かの首を狩ることの理由も思い出せずに狩り続けるように。

 

(工場の写真の笑顔の指ねじれてく)

 

karma(cloudy irony)

 

たしかに知っているこの曲は、いつも何かを必ず狂わせる曲だったが、このとき、夏の雨は降らなかった。

もう、壊されて、その上に、変えられていた。

聞き覚えのあるリズムが知らない曲にすり替わっていた。

中盤までなんの曲を歌っているのが、気づくことができなかった。

…cloudy irony。

cloudy ironyの詞と、踊りが、karmaのリズムに乗せて、再生されていた。

 

(一瞬取り戻した自分の身体への意識は、ノーワンダーランドを境に壊れ続けたステージを見て失った)

 

water(inst)

 

確かに愛した、水に飛び込む音。

狂いすぎた夢を洗うように、その水で意識を泳がせた。

暗い水底に深く潜っても、差し込む光はずっと、見えていた。

一人一人、シルエットが浮き上がり差し込む光の中で浮かぶ矢川、つづいて白い服の誰かたちが踊る。綱?

柵の向こうで、白い服が踊りだす。これは彼女なのだろうかと疑うほどだった。

水の中で白に洗われた意識は、確かにあった。

 

シルエット

 

白の影がうたう。

光があることで影は生まれ、いかされる。

影と光が一体であることをみせつける。

影と身体を重なればいなくなってしまうのに。

 

思い出くん

 

本を持つ3人の少女と、本を持たない少女がいた。

4つの鍵があり、ドアをひとつずつ開けていく。扉の中の者の感情。

ピアノが踊る、コショージメグミ

 

・・・・・

「君に、ありがとうって、言いたかった。」

 

どろどろとした、まっしろな、息もできない光に飲み込まれるーーー

「ありがとう」

「またいつか」

 

ランドリー

 

あけっぱなしの冷蔵庫。窓。思い出す部屋

「さよならした君の声は。今は二度と。聞きたくない。」

 

二度と聞きたくないのは、もうすべて終わったことだった。

別れを告げたはずだった。

 

「最後の今日はもう来ないの」

重ねた身体はちぎれてく

 

「最後の夜はもう来ないの」

 

bathroom

 

ボニョっとした跳ねる音。また、なにかが壊れているのか?…”逆再生”?

白い服をまとった彼女達。手を叩く。

森の中。森の中には更に鮮明に、森の中。鮮明な森は少し、左に寄っていて小さい。

手拍子とともにどんどん森を進んでいく。

・・・どんどんその速度は落ちていき、音も壊れはじめた。何かを悟ったのか、おわれた追われたのか、逃げ出すようにいなくなるコショージメグミ。歌声も、何を言っているのかわからなくて気持ち悪い。狂った森の中に取り残されていく呪われたような3人。音も速度が落ち続け、低音となり、どこかでなにかをつぶやいているようだが、聞き取れない。

 

現れた彼女は、血塗れだった。

 

「君を見ていた」

「見たくなかった」

「君を見ていた」

「見たくなかった」

「君を見ていた!」

「見たくなかった!」

「君を見ていた!」

「見たくなかった!」

「君を見ていた!」

「見たくなかった!」

 

・・・

動揺して、記憶にならない。ひとりまたひとりといなくなり、血まみれになっていったのだったろうか

 

“"逆"再生”

 

悲しみの子供たち

 

血塗れの彼女たちは内側に何重にも重なった影や夢に絡まるその感情をすべて放出しているとようにみえて、それは、怒りに近いようにみえる、爆発的な悲しみ。

サイケデリック胎児〜不気味なカラーリングで大変不似合いがより不気味。連なる身体の子供たちの表情は、悲しみと、混沌

「海の底で涙を垂らしてる君を消してるの。」

海の底で泣いていれば繋いだ手のひらはここにはもうない。

 

「悲しみの子供たち。いつも、ずっと、笑ってる。」

「夢を食べた鯨は君の声で揺れてるの」

 

 

喝采

 

ー 

鐘を鳴らし、授ける。 

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明ける。

ーーーーーー

拍手をする間も意識も余裕もなかった。

そういう、緊張感が張り巡らされて、全員が感じ取った空気だった。

氾濫したエネルギーを当てられ、観客は許された気持ちも持たないまま、許された拍手を叩き続けた

ーーー 

バランスを重要視する、とも聞いていたし、そこまで異変を感じる演出はないのかもしれない、と思っていた。実際、中盤まで(風の脚〜ノーワンダーランド)はちょっとひねった素敵なライブという感じだったし、油断してしまった。消し去られ、再生するドロドロに生死を感じるものになるとは思っていなかった。

何かに憑依したような表情と、全身から溢れる気迫に圧倒されていた。

ーーー

やはりbathroom~悲しみの子供たちの流れに精神を持っていかれてしまって、それまでの記憶が結構飛んでしまった。鬼神のようなコショージメグミがこびりついて離れない。

今年の夏、久しぶりにみた彼女のダンスの変化に驚いていた。宙からすこし浮いているような夢の中のようなステップが好きだったのだが、うってかわってパキっとしたキレのある動きと、曲線を描くしなやかな動きをしていて、明らかにこれまでの進化の速度よりも急速に、進化を遂げていた。振り付けの内容も、彼女を囲み、視線を集めるようなものが増えていた。なぜ彼女はこんなに急速に、群を抜いて進化を遂げたのだろうと思った。

そうして寒くなった時期にまた目にすれば、また進化している。身体表現力が圧倒的に進化していた。そもそも彼女は“エモーショナル”に一級の才能がある。感情感覚、それらを言葉や情景に落とし込むスキルがあったのだけれど、継続した努力・訓練を積み重ねて技術を習得し、そのエモーショナルの身体表現を磨き上げていた。

それが、このような形で、この日に、披露されるとは思わなかった。

ーーー

再生。

 

闇色の朝、闇に葬られた停止した時を再生。

狭い物語で過去を燃やす。そうして無くした記憶を夢で再生を試みる。

詞を同じにしながら曲調もムードも全く異なるmy cut/MORE PASTの分断と再生、曲調はkarmaなのに歌詞とフリがcloudy ironyにすり替えられた再生。

レインコートと首の無い鳥の停止と再生。海底での命の宿り。bathroomの逆再生、それは、?生以前に還り、そして、また、宇宙に宿る、再生。

メゾンブックガールは、何度も、何度も何度も同じ朝を迎え、観たような景色を観ていても繰り返す。誰かを救うために?その度に何かは壊され、悲しみ、そして、再生される。

”生”、血がかよっていること。宇宙から授けられた海に授けられた、この血が確かに何度も巡っている。それが違う血でも。

再生を思わせ続けられ残されたのは

ベスト・アルバム

Fiction

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(こちらについては毎度散々言っているししつこいけれど、やはり前回から比較しても圧倒的に違うので書かざるを得ない話で、)歌の表現のベースアップが半端ではなかった。特に、もう、和田、矢川の2者については今後「歌唱力の向上」について特筆するのはもはやおかしいとも思う。1時間半全力で休憩なく踊りながら歌いここまでぶれなくあの歌声を響かせられるプロ歌手に、歌がうまくなりましたね等、言わないだろうから。紛れもない歌姫はステージを再生に必要不可欠だ。

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突然意識を刺激してきたノーワンダーランドは一緒に振り付けをやりましょうなんていって練習させられて(!)利用されたようだった。井上さん。何点でしたか?

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彼女たち自身の歌唱・身体表現が世界を作り、それを補うスクリーンと照明演出が溶け合っていたこと。

透過スクリーンの採用がステージに海や意識の中に入ることを効果的に表されていて、表現を補助するやりすぎない素敵な手段だったと思う。直近のSHでは映像技術(レーザー・スクリーン等)演出に気を取られて彼女たちよりもそちらに視線が行くことが多かった(それは注力して見たいと望んでしたことではあった)。しかし今回通してみれば実験的な映像技術のオンパレードみたいなものでは無く、異質さを生み出したのは、技術演出というよりも音と歌唱と身体によってがベースで、それを増強する装置として存在していたことが素晴らしく思う。もちろんこのことは、彼女達のその身の表現力が、最大の演出装置になっていたということの証明だ。

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あんなものを考えて、毎日毎日夜通し練習していても精神が元気(のように伺える)のまま過ごせるあの4人は、本当にどうなっているのか?普通、あんなことしていたら狂って病んでとっくに辞めてしまうと思う。

ステージであんな表情をみせる人間が、終わればすぐに切り替わって、ギャハハと笑って、隙あれば友達と遊び、それでもファンまで大事にして、よく覚えている。とんでもない人間すぎて、今にもめちゃくちゃ遠くにいってしまって当然だ。

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ソールドアウトして最低限・当然のライブであるし、2000人程度しか目撃していないことは勿体ない話だと思う。もちろん、万人にウケるものではないとは思うし(ex血)、その場に居合る人間は、受け取る器がある者であるほうがいいに決まっている。

ただ、メゾンブックガールは音源で美しくデジタルに生きる側面だけでなく、異様に生生しくて、意識を殴るほど揺さぶってくる概念だということが、まだまだ知られていないことがこんなにももったいない。

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ありがとうの一言を聞いて、ただ。

 


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サイケデリック後遺症